ポータブル蓄電池を用いたボーリング技術

従来のボーリング技術は、原動機としてエンジン(軽油)を使用することがほとんどです。そのため、閉鎖空間での排気ガスや住宅地・建物内等での排気ガス・騒音に対する苦情が懸念されています。そこで、原動機をモーターに変えることで排気ガスや騒音の対策になると考えました。ただ、モーターは電源確保の問題が発生します。本技術では、電源をポータブル蓄電池とすることで、電源確保の問題を解決し、排気ガスや騒音対策を行った新たなボーリング技術です。

従来ボーリング技術の課題

従来のボーリング技術において、原動機としてエンジンを使用した場合、以下の課題が挙げられます。


【写真-1】閉鎖空間(ダム監査廊内)

(1) 排気ガスの排出
ボーリングマシンを稼働させるために軽油を使用するため、排気ガス(二酸化炭素)が排出されます。二酸化炭素は地球温暖化の原因の一つであり、全世界で排出削減が進んでいます。また、人体に有害であるため、閉鎖空間では使用できません。よって、閉鎖空間でボーリング調査を行う場合は排気ガス対策が必要となります。
排気ガス対策として、原動機をモーターとすることが一般的です(写真-1)。しかし、モーターの電源確保に配電工事や開放空間に設置した発電機が必要になります。前者は工事費の負担増加、後者は発電機使用による二酸化炭素の排出などの課題が挙げられます。


【写真-2】住宅地

(2) 調査時の作業音(騒音)
ボーリングマシン稼働時に作業音(騒音)が発生します。人によっては騒音による体調悪化が発生するため、都市部や住宅地内で作業を行う場合、騒音に対する地域住民からの苦情が懸念されます。
騒音対策として、防音シートによる作業音の低減を試みることが一般的です(写真-2)。しかし、作業音をゼロにすることは難しく、作業員の立ち入り等で一時的に作業音が大きくなることもあり、作業音自体が課題になります。

新技術紹介

従来技術における課題を新技術により、解決することができました。新技術に使用した機器は以下になります。

使用機器 規 格
ポータブル蓄電池 荏原実業パワー(株)製 EJ-POWER AP500
電動モーター 富士電機(株)製 MLU1107A型(三相200V,2.2KW)
インバーター 富士電機(株)製 FRN2.2C2S-2J型を改良
ボーリングマシンに使用するモーターは三相200V電源の仕様です。新技術に使用したモーターは既製品ですが、一般的な蓄電池(単相100V)では使用できなかったので、単相100Vから三相200Vに変換できるポータブル蓄電池(2台)を使用しました。ただ、既製品のモーターとポータブル蓄電池をそのまま利用した場合、ボーリングマシンの回転数を制御できず、軟弱な地盤でのコア流出や、ジャミングによる掘削停止の懸念がありました。そこで、モーターの回転数を制御するインバーターを用いました。ただし、インバーターはボーリングマシンに適応していないため、本技術用に改良しました。新技術の使用・接続状況は(図-1)の通りです。
新技術により、問題無くボーリングマシンが稼働することができました。また、原動機がモーター、電源がポータブル蓄電池になったことで、排気ガス排出量ゼロや作業音を低下することができました。


【図-1】ポータブル蓄電池(2台)→ 変換器(200V)→ 改良したインバーター → モーター搭載したボーリングマシン(新技術)
新技術実績

新技術により、ボーリング調査を実施しました。

【新技術によるボーリング調査実績】
①オールコア(φ66mm,鉛直方向):GL-30m〔礫混じり土砂 25m、岩盤(軟岩~中硬岩) 5m〕
②ノンコア(φ86mm,φ116mm,鉛直方向):GL-18~24m(礫混じり土砂のみ)
③標準貫入試験(1m毎に実施)
④現場透水試験
⑤孔内水平載荷試験
⑥サンプリング(トリプル)


【写真-3】上:礫混じり土砂,下:岩盤

ボーリングコアは問題なく、採取できました(写真-3)。また、各種原位置試験やサンプリングも実施することができました。ただし、5インチのケーシング15本挿入後に掘削が困難となり掘削限度を確認。この掘削限度は使用したモーターの出力限界と考えられます。
新技術により、従来技術に比べて、以下のメリットがあります。また、従来のボーリングマシンと変わりなく、ボーリングコアを取得することができました。

【新技術のメリット】
①排気ガスの排出ゼロ
②作業音の低下(従来:80db,新技術:50db)
③電源確保のための発電機準備や配電工事が不要
④コスト縮減〔従来(軽油)約450円 → 新技術(電気)約200円/1日〕

新技術は非常に有用な技術であるため、本技術を新技術情報提供システム*2(NETIS番号:QS-240025-A)にて登録しました。 ただ、掘削限度が確認されたことや実績が乏しいこと等、課題も確認できたため、引き続き改良を行っていく次第であります。

《引用・参考文献》
*1:地盤調査の方法と解説(2013)公益社団法人地盤工学会
*2:NETIS ホームページ